大会長あいさつ

第4回全国在宅医療医歯薬連合会全国大会in近畿 総大会長 挨拶

長尾 和宏
長尾クリニック 院長
第4回全国在宅医療医歯薬連合会全国大会in近畿 総大会長 長尾 和宏(長尾クリニック 院長)

 2000年に介護保険制度が誕生し、団塊の世代全員が後期高齢者になる2025年、そして多死社会のピークと予想される2040年に向けて在宅医療がこの20年間、強力に推進されてきました。地域包括ケアシステムを構築すべく医療と介護の連携や多職種連携が謳われてきました。40年間というスパンで俯瞰すれば2020年はまさに折り返しの年と言えるのではないでしょうか。在宅医療が順調に推進されている地域もあればそうではない地域もあり、地域の実情に応じた地域包括ケアシステムの構築が急がれます。また医師、歯科医師、薬剤師の連携も然りです。しかし現状を見渡すと在宅医療という船は順調に航行しているとは言い難いと思います。病院医療者だけでなく市民への啓発も不十分です。

 そこで第4回全国在宅医療医歯薬連合会全国大会in近畿では実行委員会でよく話し合った結果、在宅医療を本音で語りあう機会にしよう、ということになりました。これまで美談として語られてきた在宅医療ですが、現実には様々な課題が山積しています。そこで本大会では影の部分もしっかり議論いたします。多職種が本音で話し合うことで本物の「光」が見えてくるのではないでしょうか。

 今回も医師会はじめ各界のリーダーにも広く講演・参加のお声がけをいたします。在宅医療関係者や介護職だけでなく今回は病院関係者にもお声がけします。というのも地域医療構想の片翼は在宅医療であると考えるからです。医師・歯科医師・薬剤師の3者だけではなく、多職種や市民をも巻き込んだ本大会の果実は必ずや今後の在宅医療の「光」となるはずです。どうぞよろしくお願い申し上げます。

全国在宅療養支援診療所連絡会 第8回大会 大会長挨拶

原 秀憲
はらクリニック 院長
 

 第8回全国在宅療養支援診療所連絡会全国大会を2020年5月23日から24日の2日間にわたり兵庫県神戸市で開催させて頂くことになりました。会場は神戸国際会議場です。例年同様に一般社団法人全国在宅療養支援歯科診療所連絡会、一般社団法人全国薬剤師・在宅療養支援連絡会の各団体が主催される全国大会と、これら在宅療養を支える3団体が共催する第4回全国在宅医療医歯薬連合会全国大会in近畿と同時開催となります。

 今年のテーマは、「在宅医療の光と影」です。本邦は1970年以降急速な高齢化が進み、2007年には超高齢社会を迎えました。これに対処すべく、政府は1992年の第2次医療法改正で「居宅」を「医療提供の場」と位置付け、1994年の健康保険法改正で在宅医療を「療養の給付」と認めました。そして、1998年の診療報酬改定で「寝たきり老人総合診療料」、さらには2006年同改定では「在宅療養支援診療所」の創設に至っています。

 その一方で、この間にも高齢化はさらに進み、2019年の総務省推計では高齢化率は28.1%に達し、我が国は人生100年時代を迎えようとしております。このような社会構造の変化の中で我々は超高齢社会の労働人口減少社会と多死社会という側面にも対応を迫られております。

 そこで、本大会では今後も国民一人一人が安心できる質の高い在宅医療を提供するため、「持続発展可能な地域包括ケアシステムの在り方」、「安心して死を迎えるための法制度上の諸問題」、「看取りにおける死生観の再構築」に焦点を当てて議論を行うことにしました。

 地域包括ケアシステムは「自助・互助・共助・公助」の4つの「助」によって支えられております。医療・介護従事者だけでなく、家族や地域の一般市民の方々の一人でも多くの方々に御参加下さり、それぞれの立場において現場で感じてこられた意見を忌憚なく交わす機会となれば幸いです。

 最後に、開港より150年余りの歴史を持つ神戸は、古くから風光明媚であることはもとより、神戸牛や瀬戸内海の海の幸に代表される素晴らしい食材と国際都市ならではの多様な食文化が相まった食の宝庫でもあります。是非この機会に新緑の神戸を存分に楽しんで下さい。

全国在宅療養支援歯科診療所連絡会 第9回全国大会 大会長挨拶

吉田 春陽
一般社団法人大阪府歯科医師会附属歯科診療所障がい者診療 医局長
全国在宅療養支援歯科診療所連絡会 第9回全国大会 大会長 吉田 春陽(大阪府歯科医師会障がい者診療 医局長)

 本会の全国大会も今回で第8回目を迎え、令和2年5月23・24の両日にわたり神戸国際会議場において開催する運びとなりました。前回同様、一般社団法人全国在宅療養支援診療所連絡会、一般社団法人全国在宅療養支援歯科診療所連絡会、一般社団法人全国薬剤師・在宅療養支援連絡会と共催で「第4回全国在宅医療医歯薬連合会全国大会in 近畿」が開催されます。

 今年のテーマは、関西らしく「本音で語り合おう 在宅医療の光と影」を掲げて、理想や建前だけでなく、普段、対応に苦慮している事柄や問題点を詳らかにして、多職種連携をより息の通ったものにするのが狙いです。

 訪問系の歯科医療サービスは、まず医療保険に歯科訪問診療・訪問歯科衛生指導が収載され、2000年に整備された介護保険の居宅療養管理指導に先立って開始されました。我が国は社会的弱者を救済するシステムとして歯科の分野でも訪問医療制度を備えていますが、いくら形式や容れ物を作っても有機的な働きがなければ絵に描いた餅にすぎません。

 例えば「摂食嚥下障害」を考えてみましょう。

 安全に摂食嚥下リハビリテーションを実施するためには「①呼吸路の安全確保、②口腔咽頭機能の賦活、③訓練食の調整」が重要で、そのためには厳密な姿勢制御が必要です。訓練時の基本姿勢は「①端坐位、②足底接地、③軽く頷く姿勢」の確立が必要とされ、摂食嚥下リハビリテーションの3点セットと呼ばれていますが、この姿勢を獲得するにはリハビリテーション専門職(PT・OT・ST)、調理師・栄養士、看護職、そして主治医との連携が欠かせません。我々歯科医療職だけでできるものでない事は明らかです。専門職が揃った病院ではいざ知らず、居宅という現場で多職種と連携していくには相当な覚悟が要ることで、理想的な結果-即ち「経口摂取」を実現させるのは至難の業といえます。事程左様にADLが要介護状態に陥った方に対する訪問医療は、往々にして「現状維持」か、人生の「ソフトランディング」を目指した目標を設定することが多くなりがちです。であるならば、入り口で水際作戦を立てて、これ以上(あえて誤解を恐れずに言えば)「手遅れケース」を作らないよう努力する時期に来ているのではないでしょうか。

 2015年、日本老年学会と日本老年歯科学会の合同シンポジウムで「オーラルフレイルは全身的なフレイルの予兆であり増悪因子である」という投げかけが老年医学会から出されました。また時の日歯会長大久保先生が「オーラルフレイルを8020に続く国民運動にしよう」と提言されことは記憶に新しいことと存じます。「フレイル」はかつて「虚弱状態(要介護状態の前段階)」を指す言葉で、可逆的状態であることが特徴的です。

 すでに要介護状態になった人には、少しでも要介護度が進まないように、或いは進行をゆっくりとなだらかにできるような対応をしなければなりませんが、まだ介護保険の対象になっていない高齢者に対してはフレイルの段階で捕捉し、要介護状態に陥らせないために力を尽くすのが大切だと考えます。本大会では「フレイルと栄養-摂食嚥下リハビリテーションの観点から-」をテーマに、この問題を掘り下げていきたいと思います。

全国薬剤師・在宅療養支援連絡会 第11回学術研修大会 大会長挨拶

笠井 秀一
一般社団法人兵庫県薬剤師会 会長
全国薬剤師・在宅療養支援連絡会 第11回学術研修大会 大会長 笠井 秀一(一般社団法人兵庫県薬剤師会 会長)

 ご存知のようにわが国では、地域包括ケア構築を目指す2025年、更には高齢者の人口がピークを迎える2040年に向けて医療提供体制が大きく見直されようとしています。薬剤師・薬局においては平成27年10月に、現在の薬局を患者本位のかかりつけ薬局に再編するために、~「門前」から「かかりつけ」、そして地域へ~をテーマとする「患者のための薬局ビジョン」が厚生労働省より公表され、平成28年4月には、地域包括ケア構築時における薬剤師、薬局が果たすべき役割として①服薬情報の一元的な把握とそれに基づく薬学的管理・指導、②24時間対応、在宅対応、③かかりつけ医を始めとする関係機関等との連携強化といった、かかりつけ薬局としての機能を基に、地域住民が気軽に薬局を訪れ健康相談ができる機能をもった「健康サポート薬局制度が医薬品・医療機器等法に明記されました。

 又、令和2年4月施行を目指す医薬品・医療機器等法の一部を改正する法律案では、住み慣れた地域で患者が安心して医薬品を使うことができるようにするための薬剤師・薬局のあり方の見直しとして、薬剤師が、調剤時に限らず、必要に応じて患者の使用状況の把握や服薬指導を行う義務、及び患者の薬剤に使用に関する情報を医療提供施設に医師等に提供する努力義務が明記されます。高齢化社会における地域住民の薬剤師への期待と責任を果たすために安心・安全な薬物治療の確保に向けて薬剤師はこれまで以上に薬学的知見を発揮していかなければなりません。

 このような薬剤師・薬局を取り巻く環境変化の中で、薬局薬剤師による在宅業務の現状は、在宅患者訪問薬剤管理指導及び居宅療養管理指導の算定回数は日本薬剤師会の調査によると、平成29年度においては約930万回と10年間で5倍近く伸び、居宅療養管理指導については厚生労働省老健局の集計によると、平成28年1月において19437軒と全国の約3分の1の薬局において実績があることが示されています。しかし、その多くは施設系の業務であり、所謂、高齢者の居宅における実績は地域包括ケアで求められるレベルには達していません。

 今後の薬局薬剤師における課題は、様々な法改正の中で薬局業務を対物から対人に移行し居宅業務に対応出来る時間を作るとともに、地域の様々な多職種の方と連携を深め、薬剤師が居宅でなにができるのかを理解してもらわなければなりません。

 地域包括ケア構築まであと5年となる2020年、節目の年に開催される第4回全国在宅医療医歯薬連合会全国大会にたくさんの医療系、福祉系の方々にご参加いただき、大いに熱い大会になりますことを祈念致しましてご挨拶とさせていただきます。